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ユング心理学入門(河合隼雄著)の熟読&解説を終えて

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ユング心理学入門(河合隼雄著)を熟読してみる - 648 blog

というわけで、「<心理療法>コレクションⅠ ユング心理学入門(河合隼雄著)」を熟読し、章ごとに解説を行ってきた。

そこで今回は総集編という形でお送りしたい。

 

ユング心理学はオカルトではない

本書を読んであらためて感じたことは、ユングの臨床に対する真摯な姿勢のあり方だ。
僕らのような素人が浅くユング心理学に触れると、ついつい「占い」「錬金術」「夢診断」などの神秘的なキーワードに目が行ってしまうものだ。

しかし、ユングは臨床主義の姿勢を崩さず、必要以上に「神秘の合理的な説明」に深入りしなかった。あくまで現象は現象として尊重し、診療に当たっていたのだ。

ユング心理学は哲学でも思想でもない

ユング心理学の特徴は、人間が生きる目的を「自己(セルフ)の統合による成長」と定めた点にある。この考え方は、一種の哲学や思想として魅力的でもある。

しかしユング心理学は、あくまで臨床での実用性に根ざしており、単なる座学や言葉遊びに終わることを免れている。

ユング心理学は現代人を救えるのか

結論としては、ユング心理学は、複雑化した現代社会に暮らす人の心をときに厳しく、ときに優しく導く、この上ない方法論になると思う。

さすがに素人がカウンセリングをすることはないだろうが……

そこまでいかなくとも、自分自身の悩みやストレスの正体を見極めたり、人間の多様性を受け止めたりする、ヒントにすることはできるだろう。

タイプ理論

タイプ理論とは、「人間を内向型、外向型に分け、さらに4つの心理機能の傾向を分析する」といったものだった。

これだけを考えると、「人間はそんなに単純なものではない」と思いたくもなる。
しかし、きちんと読んでいくと、タイプ理論の素晴らしさが見えてくる。

ずばりタイプ理論の価値は、「ある人間の短所も長所も、心の全体性の一部であり、切り離すことはできない」という前提に立っている点にある。タイプ理論をベースに考えると、自他の多様性を認めることができる気がする。

元型は人形のコレクションではなく、野球の守備陣だ

ユング心理学というと、アニマ・アニムス、シャドウやペルソナなどで代表される、元型の概念が有名だ。

いかにも人間の無意識に住んでいるキャラクターのように思えてくるが、実際のところは、心の中に人形のように並んでいるようなものではない

アニマやアニムスはその人の精神的な半身とも言える重要なもので、アニマ・アニムスを受け入れるのがほぼ、自己実現(個性化)と同義である。

その一方で、ペルソナはいつも外に向かって顔を向けて、その人の対外的な仮面になっている。

また、シャドウは本当の顔と仮面(ペルソナ)のギャップより生まれる、心の闇の部分だ。

こんな具合に、元型たちは心の中のそれぞれの場所に位置し、僕らを守ってくれている。

元型とは心の奥で並んでいる人形のコレクションではなく、それぞれの守備位置を守る、野球の守備陣のようではないか。

夢分析

夢分析については個人的に興味があるため、特に掘り下げていきたいと思っている。
今後、僕自身の印象深い夢を対象に、夢分析を実施してみたい。

今ならなんとなく、「あの夢」や「この夢」を理解できる気がする……

占い

「シンクロニシティ」という不思議な偶然の一致を認めているユング心理学を延長して考えると、(実用主義と現象主義の範疇において)一部の占いを肯定できる気がした。

そのため、ユング自身も易や相術やタロットカードを研究していたのだろう。

まとめ

今回は、「<心理療法>コレクションⅠ ユング心理学入門(河合隼雄著)」の解説企画の振り返りとなった。

それにしても、心を掘り下げる道というのは危険な難路ではあるが、踏み込んでしまったら突き進むしかない。

この記事を読むあなたも、おそらくは心を掘り下げずにいられないか、あるいは、その必要のある人なのだろう。

きちんと付き合って行けば、心はきっと輝き続けてくれるはずだ。

それではまた。

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